○カップ
四大元素の「水」を表します。感情と霊感のエネルギーに関わります。対応する大天使はガブリエルです。方角は西。
*コートカード
カップの騎士
エレメント:水の中の火
雨と奔流の素早く激しい攻撃を表します。また、水の溶解力を表します。彼は、輝く翼の付いた黒い鎧を身にまとっています。この翼は、彼の白い軍馬の跳躍姿勢とともに、彼が水の最も活動的な面を示しています。右手には杯を持ち、その中から、攻撃性を表す蟹の姿が現れています。
それにもかかわらず、このデッキの示す人物特性は、たいてい受動的であって、優美で、文学・芸術を愛しています。彼は、控えめで温和です。誘いにはすぐに応え、熱狂的になりやすいが、あまり長くは続きません。
マイナスに出ると、官能的で、怠惰で、信用できません。
○キーワード、解釈
+優雅な男性、芸術的、熱狂的、与え、分かち合う、享楽的、愛を注ぐ
➖偶像的男性、意志薄弱、浮気性、虚栄心、薬物依存、淫乱
カップの王女
エレメント:水の中の水
受容と反射の力を表します。彼女の表象は、極度の清浄と美であって、無限の精妙さを具えています。良い意味で包容力があり、悪い意味で自分がありません。彼女は観察者です。
この女王は、静かな水面に王座を占めています。手には巻貝に似た杯を持ち、その中からザリガニが出ています。
〈無限なる母〉は、イシスの蓮も持っています。
このデッキの特性は、夢心地、幻想、静隠です。彼女は、忍耐強く、あらゆる物を受けとめ送り出しながらも、自分自身はそれに影響されることはありません。
彼女自身の受ける衝撃や感銘を通じて、人を引きつけ、先導します。
楽しい時には徹底して楽しみなさい。ただし、そこには誘惑の危険もあるので注意してください。
○キーワード、解釈
+観察者である女性、純粋、受容性、創造力、詩的、落ち着き
➖依存的な女性、誤解、曖昧、錯覚、自己受容や信念の欠如
カップの王子
エレメント:水の中の風
身勝手な芸術家のカップのプリンスは、一方で弾力性、揮発性を表し、一方で蒸気のエネルギーを表しています。鎧は、覆いというよりは、彼の体から生え出てきたようです。冑、戦車に鷲が描かれています。その翼は薄く、気体に見紛れるほどです。
右手には水の元素にとって神聖な蓮の花を、左手には杯を持ち、その杯からは知恵を表す蛇が出ています。戦車の下には、静かで澱んだ湖水があり、上に雨が激しく降っています。
このデッキに表される人の精神的特性は、鋭敏、秘めた激しさ、技巧です。彼は全く謎めいていて、全ての面で手際が良いです。表面上は平静で落ち着いて見え、外部からの影響を受けやすいようですが、その実、それらを受け入れて自分に有利なように変質させてしまう力を持ちます。
集団やチームプレイよりは個人の仕事を貫こうとする男性です。愛を表す蓮は下に向けられており、カップの中を見つめる彼の姿は、己の芸術的な高みに酔っているのかもしれません。
○キーワード、解釈
+鋭敏な若い男性、芸術家、有能、巧妙、秘められた情熱、技術
➖無慈悲な若い男性、利己的、情け容赦ない、慇懃無礼、手段を選ばない
カップの王女
エレメント:水の中の地
彼女の地の部分は、結晶化の能力を表します。水の中の地は軽やかに水を吸い込みます。概念に実態を与え、生命を支え、化学結合の基礎をつくる水の力を象徴しています。
踊る彼女のロープの端には結晶ができているのが見えます。感情の明晰さも表しています。彼女の王冠の羽飾りは翼を広げた白鳥で、東洋哲学のAUM(オウム)と言う語を意味しています。左手の蓮は愛を表し、右手の杯から亀が現れています。これはヒンズー哲学で、背中に宇宙をのせた象を支える亀です。創造の力を象徴する気高き魚、イルカが戯れています。
王女の性格は、限りなく優雅で、あらゆる愛らしさ、すべての官能、穏やかさ、親切、優しさが含まれています。ロマンスの世界、永遠の歓喜の夢の中に住んでいます。表面的には利己的で怠情に見えるかもしれません。
マイナスに出ると、全く現実的ではない夢想家の小娘になってしまいますが、プラスに出ると、他人に依存しながらも、逆にその助けとなる人物と解釈できます。
○キーワード、解釈
+優雅で愛らしい若い女性、優しさ、親切、ロマンティック、何事も易々とやってのける、感情に執着しない、フレンドリー
➖わがままな若い女性、贅沢、怠情、お人好し、甘やかし
*小アルカナ
カップ1 ケテル 水
最も神秘的で本来の形をとった〈水〉の要素を表します。ワンドが限りなく男性的で動で陽であるのに対し、カップはそれを補完するように女性的で静で陰となります。しかしながら、カップは感情を表し、流れゆく感情にその杯は満たされています。
カップから流れる水、液体によってエレメントとしての水の力、すなわち感情や愛の力がどのように働くかということを示しており、場合によっては血、ワインとなったりもします。
杯の上方の聖霊の鳩は、液体を清めるために下りてこようとしています。カップを子宮と見立てれば、聖霊の降臨は受胎を表すでしょう。クロウリーは、「杯の底には月がある。なぜなら、その自然の第二の形態を知覚し生み出すのが、このカードの美徳でもあるからだ」と記しています。
○キーワード、解釈
純粋な愛のエネルギー、あるがままの感情、幸福、喜び、豊穣、多産、幸福と快楽、自己証明
カップ2 ラブ 愛 コクマー 蟹座の中の金星
2は常に言葉と意志を表します。『法の書』の「愛は法なり。意志の元の愛こそは」の精神を体現したデッキです。蟹座は十二宮の中で最も受容性に富みます。蟹座の中の金星は奉仕的かつ排他的で、その愛に他者の入り込む余地はありません。
クロウリーは、最も広範な意味での男性と女性の調和を表し、完全にして落ち着きのある調和と、強烈な喜びと恍惚を放射すると記しています。
二つの蓮から絡みつくイルカを通して二つのカップに勢いよく水が流れ、海に溢れ出しています。蓮は愛を表し、イルカは錬金術にとって神聖な象徴であり、一般的な観念では「王の術」と呼ばれています。
○キーワード、解釈
意志の元の愛、豊かな感受性、男女の性の調和、恋に落ちる、ロマンス、二人の世界、友情、喜び
カップ3 アバンダンス 豊穣 ビナー 蟹座の中の水星
このデッキは〈水〉のスートにおけるビナーに関係します。クロウリーによると、デーメテールまたはペルセポネーのデッキであり、冥府の王、プルートーと関連強い女神や女性のデッキです。
杯はざくろの実です。ビナーの特性を示す暗く穏やかな海から立ち上がったそれぞれの蓮の花から、杯にふんだんに注がれる水は外へ溢れ出ています。この充満する喜びの中に〈愛の意志〉の達成があり、肥沃の霊的な基礎であるとクロウリーは記しています。
蟹座の中の水星は鋭敏さや記憶力を表しますが、同時に軽薄さも表します。物質的な満足やもてなしは、たとえ楽しかろうと疑ってかかるべきということです。ビナーは一面月ですが、他方、土星でもあります。ペルセポネーはプルートーの国でざくろの実を食べたために下界に閉じ込められました。この教訓が示されています。
○キーワード、解釈
豊かさ、愛の芽生え、楽しみ、手厚いもてなし、娯楽、色欲、京楽、親切、博愛、遊び心、お祝い
カップ4 ラグジュアリー 贅沢 ケセド 蟹座の中の月
このデッキは〈水〉の領域のケセドの関係します。深淵(アビス)の下では、元素のエネルギーは規制されて平衡を保ち、当面は安定しているとはいえ、根源の純粋さは失われています。
見えている海は、波立っていて、その上に立つ四個の杯はもはやあまり安定していません。ケセドは木星の支配領域にあり、吉相の出るセフィラーですが、4という数字は魔術的に複雑です。良好な状態にあるように見えて、隠れた危険や衰退の兆しの予感を読み取れるのです。
『贅沢』というタイトルには、カップは満たされているのに、そのエレメントの力に不満を抱いていることで、貪欲さや無いものねだりにつながっていることが含まれています。
○キーワード、解釈
安心感、快適、衰退の兆し、心配と混ざった快楽、欲望の放棄、スタンドプレー、仲間割れの恐れ
カップ5 ディサポイントメント 失望 ゲブラー 蠍座の中の火星
このデッキは、〈水〉のゲブラーに支配されています。ゲブラーは激しいので、自然に反感が生じます。安楽時の全く予期していないときに妨害や損失、失敗が発生することは『失望」につながります。
蓮は激しい風により花弁を引き裂かれ、杯の中には水が全く流入していません。海は渇いて淀み、死の海となっています。4のデッキで予感されていた損失や衰退が形となって現れています。火星は蠍座の支配星で、魅惑と威嚇に働くが、猜疑心と欲深さを持ち合わせます。
杯は逆五芒星に配置され、物質的な欲望が裏切られる事を示しています。あるいは物質が精神を打ち負かしてしまうでしょう。
○キーワード、解釈
満たされなかった期待、不満、混乱、頓挫、失恋、快楽の終わり、絶望、後悔
カップ6 プレジャー 快楽 ティファレト 蠍座の中の太陽
このデッキは〈水〉における6、ティファレトの影響を表します。トートタロットではラッキーナンバーである6を表す太陽の影響が加わり、さらに強化されています。
蓮の茎は、踊りの精妙な動きを見せて群れ集まっています。勢いよくカップに水を注いでいますが、溢れ出してはいません。物質的な快楽には限界がある事を示しているのと同時に、幸福、努力や緊張を伴わない自然な力の調和、安楽、満足を意味しています。
4で贅沢、5で失望、6で身の丈にあった、分相応の満足を得るという段階が示されています。
蠍座の太陽は目的意識を自覚的に持ちますが、猜疑心や復讐心も表します。背後の淀んだ地面が、錬金術的な腐敗作用を表し、これは、あらゆる豊穣と生命の基盤です。快楽は性的な意志の達成を強調して表しています。
○キーワード、解釈
苦しみ、快楽、快適、幸福、幸運、成功、あらゆる欲求の満足、安らかさ、余裕
カップ7 ディボーチ 堕落 ネツァク 蠍座の金星
〈水〉のスートにおけるネツァクに関係します。ネツァクは金星の支配領域であり、性愛に関連しますが、蠍座の金星が更にその意味合いを強めています。
釣り合いの不足からおこる不変の脆弱性が再び現れています。6の快楽に必要以上にのめりこんでしまったためです。蓮は毒を持ち鬼百合に変わり、カップには水ではなく緑色の粘液を注いでいます。
杯は虹のような色合いですが、堕落の観念を具現化するものだとクロウリーは記しています。杯は下向きの三角形が二つながらに重なり、最も大きな一番下の杯を毒々しく溢れさせています。クロウリーは、このデッキは6のカードの表象を邪悪で嫌らしい物にしたに等しいと記しています。
○キーワード、解釈
耽溺、アンバランス、妄想、不倫、中傷、情欲、放蕩
カップ8 インデレンス 怠惰 ホド 魚座の中の土星
〈水〉のスートにおける8、ホドがこのデッキを支配します。魚座の中の土星、魚座は穏やかですが、澱んだ水です。土星はそれを徹底的に鈍化するとクロウリーは記しています。7のデッキの堕落と放蕩の帰結として、孤独や詐欺を表します。
蓮はかろうじて二本の茎だけが生きており、下の3つの杯に水を注いではいますが、一杯にはなっていません。杯も古びて壊れかけています。海は、耕作不能の水溜り、潟となっています。
これは、5の『失望』と似ていますが、望んで得られなかった物の失意を表すのではなく、関心やエレメントへの希求、それ自体がすでに枯渇していることを意味しています。
次の段階のために、物質的な繁栄を捨て去ることも意味します。執着や未練を軽やかに手放すことの啓示と受け止めるべきでしょう。
○キーワード、解釈
感情的枯渇、興味を失う、怠惰、無気力、不愉快、不健全、慢性化する病気、物質的繁栄を捨てる
カップ9 ハピネス 幸福 イェソド 魚座の中の木星
水のスートにおける9、イェソドは、ネツァクやホドが中央の柱から逸脱したために失われた安定性を回復させます。9はまた月の数でもあるため、水の観念を呈しています。
整然と並べたれた杯は息を吹き返した蓮から均等に水が注がれて溢れ出しています。このデッキは、水の根源の力の極致と完璧さが盛観を呈しているとクロウリーは記しています。
魚座の木星は芸術性や霊感を高めますが、脆弱や緊張も強いるので、成功や幸福は一時的なものとなります。しかしながら、魚座に配置された木星の影響は共感以上のものです。明らかな祝福であり、水の力が最も完成し、最も有益である様相を示すとクロウリーは記しています。
表面的幸福に満足して大事なものを見失っている状態、物質的に満たされていても人間関係では孤独な状態を表す時もあります。
○キーワード、解釈
期待、希望、一時的な幸福感、恩恵、完全な成功、健康
カップ10 サタイエティ 飽満 マルクト 魚座の中の火星
このデッキは、相争う要素、完成と過剰を表します。一方では、処女たるマルクト、10の影響を受けます。生命の樹のセフィロトの配列の杯ですが、傾いており不安定です。体系全体の端から端まで覆いかぶさるような巨大な蓮から、各杯に水が溢れ出しています。溢れ出しているのは中央の柱に位置する杯だけで、慈悲の柱と峻厳の柱の杯は水を溢れさせてはいません。
魚座の火星は献身と自己犠牲に加えて甘えや依存も意味します。完結したエレメントの力の騒乱を予想させます。
品格が悪ければ、マンネリに陥った愛、倦怠期の夫婦というような船団が可能です。良い場合は、充足した愛の継続持続と読み取れるでしょう。
○キーワード、解釈
退屈、飽満、飽き飽き、持続する成功、浪費、お節介、感情をもてあます、依存