網様体賦活系(RAS)という言葉を聞いたことがありますか。脳の中にある情報のフィルターのような仕組みです。私たちは毎日、膨大な情報の中で生きています。でも、その全てを意識することはできません。だから脳は、「今のあなたに必要だと思うもの」を優先して見せてくれます。例えば、赤ちゃんが生まれると街中の赤ちゃんが目に入るようになる。車を買うと、同じ車ばかり走っているように感じる。あれもRASの働きです。私はバスに乗ると、いつも目に入る光景があります。視覚障害のある方を丁寧に誘導している人。作業所の送迎車を待ちながら、道端で並んで立っている親子。もしかすると、他の人には特別な光景ではないのかもしれません。でも私には見えます。なぜなら、障害のある次男と長い時間を過ごしてきたからです。学校との話し合い。進路への不安。周囲に理解してもらえない苦しさ。そして、小さな成長に心から喜んだ日々。そうした経験が、私のRASを変えたのだと思います。
だから私は、支援が必要な人や、そのご家族に自然と目が向きます。以前は気づかなかったことにも気づくようになりました。世の中には、障害について簡単に語る人もいます。私も教員時代、そして親として、たくさんの言葉を耳にしてきました。そのたびに思うのです。実際にその立場になって初めて見える景色があるのだと。
障害のある本人の努力。家族の葛藤。支援する方々の工夫や優しさ。それは外から見ているだけでは分からないことがたくさんあります。だから私は、分からないことを分かったつもりにならない人でいたいと思っています。RASは、意識を向けたものを見せてくれます。不安ばかり探していれば、不安が増えていく。欠点ばかり見ていれば、欠点が目につく。
でも、人の優しさや頑張りに目を向ければ、そういうものも見えてきます。私は今日も、懸命に生きている人たちを見ています。目立たなくても、誰かのために頑張っている人たちです。そして、そういう人たちが普通に笑って暮らせる社会になったらいいなと考えています。大きなことはできません。それでも、そう願う人が一人いることで、何かが少しずつ変わるかもしれない。そんなことを思うのです。そんなことを思うのです。あなたのRASは、今日何を見ていますか。見えているものが、あなたの世界をつくっています。
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